小学6年生、という特別だった存在

小学6年生は、僕にとって特別な存在だった。

 

小学1年生になった僕は、入学してまず行われる入学式を前にして、小学生になるという期待と、小学生としてやっていけるかどうかという不安とが入り混じっていた。

 

そんな入学式の入場シーンでのこと。緊張しながら待っている僕の横に、僕よりも大きな男の人がやってきた。6年生だった。

 

その人は来るや否や、僕の手を握ってくれた。その手は温かくて、力強かった。今まで両親と幼稚園の友達とくらいしか接した記憶がなかったので、僕にとっては眩しいくらいに大きな存在で思わず見とれてしまうほどだった。

 

その人のおかげで僕は緊張がほぐれ、無事に入場式を終えることができた。

 

後日、その人に宛てた手紙を書く、という時間があったので、1年生なりに頑張って感謝の思いを伝えた。

 

 

その後も僕の6年生に向けた視線は特別で、集団登校の時も前を歩く6年生の背中が大きく見えたし、学年関係なく公園で集まって遊ぶ時も6年生は体格も大きくリーダー的存在だった。

 

これは学年を上がっても変わらなかった。2年生になって自分より下の1年生が入ってきても、自分が偉くなったような感覚は全くなく、6年生には羨望の眼差しを向け続けていた。

 

3年生、4年生になっても変わることはなく、自分より年上がいるという安心感から抜け出せずにいた。むしろ、4年生では4、5、6年生だけのクラブ活動が始まり、6年生に対する尊敬の眼差しはより一層強まるばかりだった。

 

5年生ともなると何かしらの役割を任せられることもあり、少しずつ年上としての自覚も芽生えつつあったが、それでもまだ6年生がいる、という思いを持ちつづけていた。

 

 

そして、ついに6年生になった。自分がこの小学校で1番年上の存在になった。  

 

しかし、どうすればいいのか分からなかった。今までずっと年下気分で過ごしてきた僕は、下の学年の小学生たちにどうやって接すればいいのか、全く分からなかった。

 

そんな中、6年生になって初めてのイベントがあった。それは、入学式。1年生の時は知らなかったが、入学式の時に6年生が1年生と一緒に入場する、というのは毎度恒例のことらしかった。

 

そして、例に漏れず僕も入学式に参加することとなった。しかし、不安しかなかった。果たして1年生は、僕のことを6年生と見てくれるだろうか。手をちゃんと握ってくれるだろうか。変な目で見たりしないだろうか。

 

入学式の行われる体育館には、多くの1年生がいた。一緒に入場する1年生の名前は教えられていたので、緊張を隠しつつその子をなんとか探しだし、横に立った。

 

どうしたらいいのか分からず、しばらくそのまま立っていたものの、これではまずいと思い、そっとその子に向かって手を伸ばしてみた。

 

すると、すぐに僕の手を握ってくれた。まさかと思っていたので、とても嬉しかった。そしてなにより、手を握ったその子の、1年生の手が小さかった。自分と比べると差は歴然で、知らず知らずのうちに自分が成長していたことを改めて実感した。

 

それからしばらく後、入学式で一緒に入場した1年生から手紙が届いた。何て書いてあるのか半分くらいはよく分からなかったけれど、その文字と絵からその子の気持ちがはっきりと分かって、単純に嬉しかった。

 

 

そんな小学生。今となっては地元の小学生を見かけても、それが何年生なのかは分からない。