いつも見ている景色が違って見える日

朝起きて、眠い目を擦りながらトイレに行って、それから顔を洗う。

 

少しまだ寝ぼけた頭で、朝ごはんの準備をする。こんがり焼けたパンの匂いが、少し酸味のきついコーヒーの香りが、今日も部屋の中に充満する。

 

時計を見ると、もう出かける時間だ。慌てて服を着て、最低限の身なりを整える。

 

いつもと変わらない、慌ただしい一日が始まる。そう思いながらドアを開けた瞬間、強烈な違和感に襲われた。

 

目の前にあるのは、いつもと変わらない景色。隣に建っているアパートも、頭上に広がっている空も、いつもと同じ。でも、何かが違う。

 

いつもは草臥れて見えるアパートが、今日はどことなくヨーロッパの高貴なオーラを放っているように見える。

 

頭上に見える空も、ひとつの濁りもない青と白が広がっていて、周りの空気もキラキラと輝いているように見える。

 

歩きながら学校に向かっている間も、いつもは混雑している道が、今日は人も車も少なくて、とても静かだった。

 

まるで別の世界に迷い込んでしまったような、そんな気さえする。

 

まさか、そんなことがあるわけがない。もちろん、頭の中では分かっている。

 

けれど、この少しフワフワした、どこか落ち着かない、でもワクワクするような気持ちを、いつまでも味わっていたい。

 

この先に進んだら、この門を潜ってしまったら、いつもと変わらない日々に戻ってしまうから。

 

別に、苦しいわけでも、辛いわけでもない。だけど、この特別な瞬間が終わってしまうのは、やっぱり悲しい。

 

でも、そろそろ行こう。あのチャイムが鳴る前に。